使わなくなった物たちが部屋から消えてゆく
捨てたのだから、消したのは私なんだけど
それでも
私にはいつも、それらがすべて
私に断りもなく消えたように見えていた
そして、そんなふうにして居なくなった人を
一人だけ知っている……
あの人もまた、私が突き放してしまったのだ
けれど私にはやっぱり
私に断りもなく消えたように見えた
目を瞑って、後ろを向いて
彼女は時おり、彼にそんな言葉を口にする
それは階段の上とか駅のホームとか
そういった場所で言うのであって
一緒にテレビを見ていたり
食事をしたりする時は言わない
だけどたまに、彼とそういった場所を訪れた時は
ほぼ例外なく、いつも笑顔で告げるのだ
目を瞑って、後ろを向いて
いつだって彼はそれに逆らわない
むしろ喜んでその運命を受け入れてきた
彼は、いつもそんな人だった
そんな人が、いつも彼だった