明日にはすべてが新しく

 

明日にはすべてが新しく
ひとつの終焉が
そしてひとつの始まりが訪れる
新年を迎える人々は夜空を仰いで
そこに広がる紫色の星々に、目を爛々と輝かせる
食い入るように
まるでそれが
この世で最も美味しい果実であるかのように
種があろうとも、皮を剥かなくとも、平然と食べるつもりで
星が死んで新しく生まれるために食べるつもりで

 

 

人生で残り君に会える数

 

残りの人生で誰と何回会えるかがわかる機械があるらしい
君で試したら、残り会える数はたったの1回だった
そんなことをした数日後、君と会った
君は何も知らないと思うけど
僕には今日が君と会う最後だとわかっている
でもそんなことは君には言わない
僕が今日言うべきだと決めてきたのは、別の言葉だから
だけど、どうしてだろうという疑問はあった
君も僕も引っ越す予定もない
今までどおり、これからの会う約束だってしている
なのにどうして???
そんな時、何かが起きた
僕と君のいた建物で、大きな振動と大きな音が発生した
何事か身構える暇もなく、床が崩れ落ちた
一瞬で暗闇になって、僕らのいた空間は地の底に閉ざされた
僕と君は顔を見合わせた、二人とも無事だ
瓦礫に押し潰されなくてよかった
でもどうやって脱出しようか
助けを待とうか、自力で瓦礫を押し上げようか……

 

 

今さら助けてくれないで

 

転んだ時に袖の中に泥が入って
出てこなくて気持ちが悪くて
出そうと必死になってる間に置いて行かれた
傘のふちの留め具が外れて
頑張って直したのに手はびしょびしょで
乾かそうとしている間に行き先を見失った
そんな時に僕の前をただ通り過ぎたあのひとが
大好きだったあのひとが
泥も出てきて手も乾いて
泣きながら道を探して
やっとの思いで追いついた後になってから
申し訳なさそうに手を差し伸べてきた
助けてくれるなら、あの時のほうがよかった
今さら助けてくれないで
僕に追い打ちをかけないで

 

 

昼の中

 

横断歩道の信号の案内音と、行き交う雑踏
鳥の戯れる声や、車の走行音
青空を走る飛行機の重低音
どこかで行われている工事の音……
静かだ
たくさんの雑音が耳に入ってきて気持ちが良い
すべての雑音がひとつに合わさって
ある種の静寂のように思えてくる
こんなにも彩の豊かな静寂は他にはない
このうるささ、けだるさ、ぬくもりを
好きなだけ味わっていたい
みんなもっと昼の中に飛び出したほうが良い

 

 

極彩色の多用

 

上辺だけ厚く着飾ることで弱点や汚点を上手く隠して
本当の自分を綺麗に装って少し強気に堂々と振舞って
ちょっと悪い言い方すると見せつけ用にでっち上げた
余所行きの自分自身の人形で馴れ合い遊びしてるだけ
でも周りの人には好評だし本人もそれで満足していて
結局誰ひとり損はしてないし決して悪いことではない
なのに何故かそれを良く思わない一部の嫌な人たちは
別に自分が何かをされたり傷ついたわけでもないのに
その人の弱点を調べ上げて周りの人にそれを知らしめ
自分の事は棚に上げたまま言いがかりばかりを考えて
鬼の首でもとったように得意気になって躍起になって
その人の評価を下げに下げ社会の底に貶めようとする
だけどそんな奴知るかって始めから構わなければ良い
厚塗りの何が悪いんだって開き直って着飾ったら良い
ごてごてに着飾ってそれでかっこよくて綺麗だったら
自信をもって歩いてやれば嫌な風評もいつか消滅する
そうやって生きてる人は上手い生き方をしてると思う
上手く生きてる人たちはしっかりと着飾ってると思う
そんな色

 

 

貴方を知っているのは私だけでいい

 

貴方を知っているのは私だけでいい
みんなには内緒の、私だけの大切なひと
まるで秘密の隠れ家のような、自分だけの居場所のような
他の誰にも知られたくないと思わせる
少しだけ特別なひと
だけど本当はとっくにみんな知っていた
あの人もあの人も、私が知るよりも早く貴方を知っていた
貴方を知ったたくさんの人の中で、私は随分と後のほうだった
もっと早く貴方を知りたかった
出会いたかった
もしそうだっとしても
貴方を知っているのは私だけだなんて
そんなことあるわけなかったのは、わかってるけどね
でも、ちょっと言ってみただけ

 

 

ふたりさよなら

 

何も知らないまま私のもとを去ってちょうだい
何も聞かないまま
ふたりサヨナラにしてちょうだい
実は前から結構気を遣ってあげていたことや
嫌われたくなくていつも折れてあげてたこと
言い返したかったこともその度にすべて飲み込んで
それを今でも全部憶えていることや
憶えているからやっぱり今からでも言おうと何度も何度も思って
でも何度も思い直して結局やめたことも
こうやって何も知らないまま私のもとを去ってもらおうと決めたことだって
全部全部
今さら知ってしまえばあなたの負い目になることばかり
そして知らせたことで私自身の負い目になることばかり
だから
何も知らないまま私のもとを去ってちょうだい
何も分かち合えないまま
ふたりサヨナラにしましょう
私も何も知らせないまま、あなたを見送りもしません
ただ私はこれらすべてを忘れないために
後悔し続けるために
ここに書き残して大事に大事にとっておくことにします
あなたがこれを読む日が来ないことを祈って……