降りる駅までに書けること

 

私は真夜中の地下鉄に乗り込んで
ペンと手帳を取り出す
次の駅までに書けることを書く
書いたらまた、次の駅までに何か書く
何かを書いていると、誰かになる
地下鉄に揺られるだけの私が
いろいろな何かを書いては
誰かになっていく
繰り返し繰り返しそうして
次の駅までに書けることを書き
また次の駅までに書けることを書いていく
そのたびに知らない誰かになり続ける
……私は最初は誰だったのだろう
もうわからない
それでも書き続ける
降りる駅までに書けることを
降りる駅を覚えていない今でも