水彩船

 

小さな船を、そっと浮かべてみる
美術室の水道に水を溜めて……
最初少しだけ浮かんだけれど
親指を通す穴から
あっという間に浸水し、沈んだ
こんな物に絵を描くなんて
まったくもって君らしい
絵なんてもう描かないって僕が言ったら
じゃあ、そうしたら? って
本当に描けないようにしてくれたんだ
困ったな
貧乏で、これしか持ってないのに
絵が綺麗すぎて消せないじゃないか
だけど君は、さよならの時に言ったんだ
描きたくなったら、もう消していいよって
ゴメンねって
そして、私の分まで頑張ってねって
……わかった
ちゃんと描くようにするから……
ああ、君の綺麗な絵が、水に溶けてゆく
だけどその水はもっと綺麗に
いろんな色に染まったよ、ありがとう