未来

 

未来が実ったの

電話口からの君の言葉に、僕は涙した
君は小さい頃から明るい子で
よく将来の夢なんかを語っていた
お互いの家で
同じ通学路で
幼稚園で、小学校で
中学の帰り道でも
君の口からあふれる言葉は
未来を夢見た明るいものばかりだった
高校の頃は少し話さなくなったけど
大学を経て、大人になって
またよく話すようになっても
君は未来をいつも見据えていた
可愛くて、どこかぽわぽわしていて
変なところで笑ったり泣いたりするけど
未来を語る口と目は確かなものだった
僕はそんな君が、小さい頃から好きだった
だけど君にはいつの間にか
ほかに好きな人ができていて
そしていつの間にか
その恋は成就していた
僕には、まったくそんな話はなかった
ある晩の電話でようやく知らされた

未来が実ったの

電話口からの君の言葉に、僕は涙した
僕は平気なフリして、本当は泣きながら
おめでとう、と言った
鼓動が後悔で高鳴り、足が震えた
君が小さい頃からいつも話していた話には
将来の夢や未来の話には
僕は最初からいなかったのだ
……僕が夢見ていた君との未来は消えた

実ったの
実ったの

頭の中でこだまする言葉を聞きながら
僕は自分の未来を何もない場所に捨てた