痛みの物語

 

少年と少女は、世界の果てとその反対側の果てから
再びめぐり会うための旅を始めました
しかしその旅の始めからまもなく少女は死んでしまいました
一方、少年は旅を続けます
この広い広い世界の中で、たったひとりの少女と会うために
恐らくは生涯をかけることになるかもしれない長旅を覚悟して
彼はただひたすら歩みを続けるのです
世界の果てから始めた旅は壮絶な苦難の連続でした
たくさんの人と出会い
その中で助けられたこともあれば
騙されて酷い仕打ちを受けたこともありました
今まで味わったことのないような災害にも巻き込まれました
崖から誤って転落してしまったこともありました
大怪我をしました、瀕死にもなりました
地面に打ちのめされ、冷たい雨に打たれながら地を這いつくばり
涙で何もかも滲んで見えなくなりました
それでも彼は少女の笑顔を思い浮かべては、彼女を想い
再びめぐり会う約束を果たすために、と、立ち上がるのでした
ある時、旅の途中で歳の近い少年と出会って打ち解け合い
たまたま恋について語らう機会がありました
その中で彼は、少女を思い浮かべている自分に気づきます
今までただ大切な人と思っていた彼女の存在が
自分の中ではっきりと
それが好意、愛情によるものだったのだと再確認しました
彼の思い浮かべる少女の笑顔の、その輪郭が濃く色付きます
行こう
ずっと進むんだ
彼は心に少女への想いと、再会の希望を強く抱きながら
果てしない旅を、これからも続けてゆくのです