窒息の森

 

窒息の森にひとり佇む
苦しい
水のなかの水のように木々がひしめき合い
呼吸ができない
手足が重く、思うように体を動かせない
歩けない
進めないし、戻れない、出られない
ああ、ああ、向こうのほうに誰かいる
木立のあいだに誰かいる
笑ってる
すこしずつ苦しさが心地よくなってくる
意識が遠のいていく
それが不思議なくらいに気持ちがいい
ああ、ああ、誰かわかった
あれは私がむかし首を絞めた人だ
私にも教えてくれたのだ
この森のなかへと私をいざない
味わわせてくれたのだ
ああ、ああ、気持ちがいい
これこそがまさに窒息の森の森林浴だ
息ができないって、癒される