悲しみたいなら後にして

 

悲しみたいなら後にして
私今忙しいの
楽しいことも
幸せも
たった一度の人生の中で出来るだけたくさん味わわないといけないの
だから
だから、私
悲しみたいなら後にして
今忙しいんでしょ?
だったら後に回しちゃって
そしたらその時にはもうきっと忘れちゃってるから
忘れちゃってるなら、その程度のことだったんだから

 

 

うしろの人が入れ替わる

 

うしろの人が入れ替わる
前の人が入れ替わる時は気づくんだ
だけど、うしろの人が入れ替わるとわからないんだ
入れ替わったその人は
僕のうしろで
包丁を持っているかもしれない
ロープを持っているかもしれない
笑っているかもしれないし
スマホをいじっているかもしれない
僕はどうしようもなく不安になって
列を抜ける
僕が入れ替われば解決だ
だけどきっと僕の前の人は怖いんだ
うしろの人が、入れ替わったんだから

 

 

カエルとお姫さま

 

お姫さまは、ため息をつきました
いったいどうしたものかしら
手のひらに乗せたカエルに、そう語りかけます
カエルは答えました
愛する者のキスで魔法は解けて
どうやら元の姿に戻れるらしい、と
キスしないとダメなのね
本当に
いったいどうしてこんな姿になってしまったのかしら
そうこぼしつつも
恐る恐る、カエルにそっとキスをすると
その瞬間に魔法は解けて
お姫さまはカエルに戻ることができました
良かった
人間なんて、もうこりごりよ
行きましょう行きましょう
そそくさそそくさ
ふたりはそっと、人里から立ち去るのでした

 

 

嫌いな人たちの首の骨を好きなだけ折れたら

 

嫌いな人たちの首の骨を好きなだけ折れたら
どれだけ気持ちが良いのでしょう
でもどんなに許せないことがあっても
地獄に落としてやりたい人がいても
この手はその首には届かない
届いてはいけない……
想像の中で私は蛇になり
あの人やあの人の首に巻き付いて
好きなだけ締め付けて
好きなだけ苦しめて
好きなだけその骨を折ってきた
想像している音も感触も
現実とはきっと違うものなのかもしれない
だから知りたい
私を苦しめてきた
貶めてきたあの人たちは
ほんとはどんな音を鳴らして死んでいくのだろうか
嫌いな人たちの、大嫌いなその人たちの
たったひとつの好きなところ、それが
首の骨の折れる音
死に際にでもとても綺麗で心地の良い音がするのなら
私はそいつらを許してあげたい、のに、聞くこともできない、なんて

 

 

僕はキミに言ってるんだ

 

好きな人?
うん、まぁ……いるよ
え?
あぁ……知ってる人、かな、知ってる人だね
告白かぁ、まだ考えてないよ、怖いし
……
う~ん、そうだよね、やっぱり
じゃあ、次に覚悟が決まったら、しようかな
うん
あーw
ありがとう、頑張る
アンタも頑張んなさいよ?w
私も応援してるから

 

 

言葉が多すぎても足りなくても

 

言葉が多すぎても足りなくても
伝えたいことが伝わらないことがある
足し算って難しい
引き算はもっと難しい
言葉を足しすぎると回りくどい
引きすぎると意味が通じない
私の言葉は多い?
それとも足りない?
私には、私の言葉がわからないの
皆がわかる言葉なのか、わからないの
教えて、教えて
強い言葉は、なるべく引いて

 

 

思い出に遺る

 

思い出に遺したい
誰かの思い出に遺りたい
私がいなくなったずっと後で
私と会わなくなったずっと先で
その人が人生をまっとうするその瞬間に
私をふと思い出すような
思い出になりたい
私もあなたを覚えているよ
あなたもあなたも覚えているよ
ずっとずっと何十年も未来に
私が死ぬ時にも
あなたもあなたも思い出しながら死ぬよ
遺りたい
遺したい
遺してほしい
遺していてほしい……