つま先立ち

 

届いたって触れられたって
足もとはつま先立ち
頑張って背伸びしたって
少しだってカッコつかない
出会った時から貴女は全てが優れていて
僕の心は瞬く間に奪われた
見た者の心を支配するような
その大人で神秘的な佇まい
初対面の時も、その怖いくらい綺麗な顔に
気軽に話しかけることも躊躇われた
最初はちょっと近づけないくらいに思えた
それでも暖かく、近くにいさせてくれた
僕には越せなかったそんな貴女の背に憧れて
憧れるだけでずっと
憧れるだけだった
貴女はいつの間にか消えるように去って行った
二度と届かない
触れられない
この足もとが地に着く限り、行けない場所へ……
もう届かないのに、触れられないのに
足もとだけはつま先立ち
どれだけ頑張って背伸びしたって
貴女の方がカッコよかった

 

 

星屑の図書館

 

その歴史の書物の在るべき場所へ
手を伸ばして、世界の扉を開け
あてどもないほど無数にある天体の渦
足を踏み出して、宇宙の機軸を辿れ
今ここにある僕らの時間は
きっと何億年も前から決まっていたんだ
ここは僕らの起源の銀河
或いは、数多の事物の集う場所
そして世界の乗客の宿
また、宇宙に面した船着場
すべてのものは、いずれここに流れ着く
果てしない歴史の海を泳いで

 

 

無意識的な言動が他人より多い人が怖い

 

無意識的な言動が他人より多い人が怖い
いきなり突拍子もないことを言ったり
意味のわからない行動を平気でしているのに
彼ら彼女らはそれらに、自分では気付いていない
気付いていないまま、日常的に繰り返す
頭を掻く癖だとか
あ、えっと、が多いとか
そんなのまだまだ可愛いほう……
彼ら彼女らの無意識的言動は
周りの人の理性や潜在的な部分に
もっともっと嫌悪感を与え、苦しめる
底知れぬ不安を投げかける
私はたぶん、周りより特に怖がりだから
彼ら彼女らが昔からすごく怖かった
本能的に怖くって……
気付いたら刺してたの
なんだかたくさん殺しちゃった
……ねぇ、なんでみんな私を怖がるの?

 

 

私が何のために生きたか知ってる?

 

私が何のために生きたか知ってる?
貴方が寂しくないように……
ずっと傍にいるため……
……じゃないよ

ねぇ、私が何のために生きたか知ってる?
私が寂しくないように
貴方に傍にいてもらうためなの
貴方に傍にいてもらうために生きてたの
そしたら幸せだっただろうけど

じゃあ
貴方は何のために生きてるのかな
私に傍にいてもらうために生きてるって
寂しくないように傍にいてほしいって
はじめから言ってくれてたら
ずっと傍にいてあげられたかもしれないね

 

 

夢の中で待ちぼうけ

 

夢の中で待ちぼうけ
自分から目覚めるつもりはないよ
目覚めたら戻れなくなるから
この中であの子に会って
あの子が待っててって言ったから
戻るまでは待ち続けるよ
二度と会えないなんて、やだからね

 

 

誰もいない2階

 

誰もいない2階
下から見上げても暗くてよく見えない
家の中でも特別な場所
誰もが入りたがらないから
今日も僕だけで階段を上る
あれ? 昨日の扉が見つからない
ここから中に入ったはずなのに、その場所に
どうも扉が見当たらない
この中にもう一人
家族がいたと思ったんだけど