わたしはもう一人のわたし

 

わたしはもう一人のわたし
本物のわたしの生活圏内にひそむ、偽物のわたし
本物のわたしの友達や知り合いが
街でふと、わたしを見かけては
本物のわたしに知らせる
そうして本物のわたしは少しずつ
わたしの存在に気づきはじめる
でも、わたしが何処にひそんでいるのか
わからずにいる
怯えた日々を送る
だんだんと、恐怖で眠れなくなるほどに
時には写真にも写ってやるの
遠く背後のほうで
同じ服を着て、でも後ろ姿で
見間違いにも、自分の姿のようにも見える
そんな微妙で絶妙な具合にね
それに気づいた本物のわたしは
怖くて友達に泣きつくの
座り込んで立てなくなるくらいに……
わたしはそんな日々を繰り返しながら
本物のわたしとの距離感を保ち続ける
わたしは、本物のわたしと直接会ってしまわぬよう
ちゃんと気を遣っている
だって、出会ってしまうと
本物と偽物が入れ替わってしまうって言うでしょ?
そしたら
今度はわたしがあの子に怯えることになるじゃない