月を見たくて、空に沈んで

 

月を見たい夜は
眠りについたときに空に沈む夢を見る
空の中を、からだをまるめて漂い
ぼーっと月を眺める
雄大な雲海の上で
うっすらと黄色いような淡い光に包まれながら
あの優しい衛星を仰いでいると
なんだかとても、懐かしい気持ちになる
まだこの世界に月があった頃
誰もが夢を見なくとも
その目であの星を見ることが出来ていた
……そんな時代を思い出す
わたしの周りのみんなは
そんな記憶は知らないと思う
今はもう、わたしだけが覚えてること
わたしだけが、月という星を知っていて
それを見たくて、空に沈む夢を見る