少年の夜

 

少年の眠る部屋は冷たい部屋だった
暖かい食べ物も
飲み物も
暖炉もない
夢に見た聖夜はそこには無く
現実は雪だけだった
その雪はとても残酷に
少年の部屋をひたすら冷ましていった
薄い薄い布切れに顔までうずまり
少年が目を閉じていると
窓を開ける気配がした
鍵はかけていなかった
鍵なんて無いからだ
床の上に降り立つ気配
少し、重みのあるそれは
忍び足で部屋を歩き回った
少年は目を覚ましたものの
怖くて布切れから顔を出せずにいた
無理もない
少年にとっては今日はただの夜なのだ
聖夜であるという認識など
端から無かった
だからそこにいる人は
ただの侵入者に過ぎなかった
動けない
動けない
怖い
どうしよう
取るモノなんて、何も無いだろう
はやく出ていけ
はやく出ていけ
少年が目を固く閉じて願っていると
ガサゴソという音ののち
その体に、何かが覆いかぶさった
驚いた少年は体をびくつかせた
重くはない、軽い物
けど何か、重みが増した
なんだ?
なにをした?
気配が窓へと戻り
そして去ってからしばらく
起き上がった少年は首をかしげた
これは、いったいなんだろう??
少年の寝ていた布切れの上には
赤い上着が掛けられていた