誰か触った

 

誰か触った
これで何回目だろうか
友達といる時
家族といる時
一人でいる時
例えば背中や、肩や後ろ髪
誰かに触られるはずのない位置から
そんな方向には誰もいない、という場所から
いつも誰かが触るんだ
でも怖いとか気持ち悪いとか
そんなふうに思ったことなんてないよ
ないけど、ただ不思議なのはね
その時いつも
触られた感覚がしないんだ

 

 

中間色の多用

 

具体性の喪失
曖昧だけが突出して
まるで意味を成さない
主観と客観もわからない
自分がどんな形かもわからない
見えている物とそうでない物の区別もない
聞こえている音とそうでない音の判別もつかない
聞き覚えがある言葉なのか初めて聞く言葉なのか考える力が出ない
いつの間にか自分で大切な物を壊したとしても罪悪を咎める意思をもてない
例え罪悪を咎める人がいてもその人の言っていることが正しいかもわからない
自分が生きているかもわからないまま少しずつ崩れていくのにそれすらも気づけない
そんな色

 

 

明滅と出現

 

パチパチと
チカチカと
目障りで
気が散るほどに
鬱陶しくて
だけど
気にしていると
その中に見つけてしまう
暗い
明るい
暗い
明るい……
その繰り返しの中に見つけてしまう
さっきまでいなかったのに
誰かいるのを

 

 

お前は嫌われ者だね

 

お前は嫌われ者だね
彼女はそう言った
どうしてという応えはない、彼は押し黙ったまま頷く
世界中の誰もから好かれるなんて無理よ
私が世界中の誰もを好きになれないように
お前が世界中の誰もを好きになれないように
そう言って彼女は彼の頭を優しく撫でて、続ける
すべての人と愛し合うことは出来ない
嫌われ者のお前なんか、私だけに愛されればいい
お前は私のことが嫌いだろうけど

 

 

お気に入りの世界

 

お気に入りの世界?w
そうね、誰にとっても
ここは大切なお気に入り
だから誰かが軽々しく壊していいような
そんな安いもんじゃない
人も動物も建物も
試しに一度バラバラに千切って
グッチャグチャにこね回して
全部全部何もかも
粘土みたいにゴチャ混ぜにしてみようかw
それから元の形に頑張って戻してみようかw
同じものにはならないから