世界中が東を向いて僕1人が西を向く

 

世界がもうすぐ終わろうとしている、その最後の日
人々は一様に、太陽の昇る東を見つめていた
怯えたわけでも立ち向かうわけでもない
それはひとつの覚悟であった
すべての人々が涙を呑んで、終末の朝を受け入れるのだ
僕にはそんな勇気はなかった
ただひとり臆病に西を向いて、朝から逃げ出す
この世のものとは到底思えない
気味の悪いほど美しい、あの異様な太陽を背に
僕は世界の西へ西へと駆け出して、ずっと逃げ続けた
朝から逃げるように、夜へと助けを求めるように……
だけど太陽から逃げ切れるわけがない
いつしか振り返ると、太陽は確実に迫って来ていた
僕のいた町なんてとっくに通り過ぎて来たのだ
僕の知っている何人かの、その頭上もとっくに
家族や友達や、あの娘も、とっくに……
あああああ
顔を思い浮かべる度に泣き叫びたくなる
今こうして頭が熱くなって、呼吸が苦しくなるよりも
彼らと一緒に最期の時を過ごさなかった後悔の方がつらい
でもこの後悔を許してくれる人も
咎める人も
もういない
世界中が、もういない、僕1人が、いまやっと……