黒猫の亜夜子

 

……なぁ、お前さ、アタシがもしも人間だったら
……アタシらって仲良くなってたと思う?
さあね、キミとは出会ってすらいなかったかもね……
彼女は人間の姿をしていた
名前は亜夜子という
黒い服とスカート、黒い髪、そして黄緑色の瞳
でも彼女は、化け猫だった
……化け猫じゃねーっての
……ただ、死んだら人間の姿の幽霊になっただけ
それを化け猫って言うんだよ……
……チッ
彼女の不機嫌でそっけない態度が
僕は最初は苦手だった
でも時々見かける憂いを帯びた横顔に
少し惹かれていたのも事実だった
……なぁ、お前さ、アタシの骨
……いつか見つけてくれないかな
さあね、そしたらキミはどうなるの……?
彼女はそれには答えずに
寂しそうに微笑みながらやがて視線を逸らした
……アタシはずっと、人間になりたかったのかもな
……死んでから叶っても嬉しくなんか
そこで言葉を詰まらせる彼女に
少し経ってから、僕は囁いた
亜夜子、キミが最初から人間だったら、僕は……
彼女はそこで、続きを遮るように、へへっと笑った
そして言ったのだ
……ばーか
綺麗な言葉だと思った
猫の、けだるいひと鳴きのように