落ちる火

 

落ちる火は、私の目の前で
あっという間に茂みに飲み込まれた
建物の窓から落ちたであろう
その火のかたまりは
どさりと鈍い音をたてて、煙をあげた
近くまで駆け寄ってみると
火の中に何かの物体が見てとれた
イヤな臭いがして気づいた
人だった
大丈夫ですか、なんて
呑気な問いかけをしてしまったその時
それは立ち上がって
こちらに歩み寄ってきた
大丈夫ですよ?
と言っている
私が混乱して何も言えずにいるとその人は
あなたもどうですか?
なんて言って、笑っているようだった
私は怖くなって逃げた
そいつは燃えながら追いかけてきた
うまい逃げ道が咄嗟に見当たらず
廃墟の上階にある一室まで追い詰められ
私は腕をつかまれた
火が燃え移り、窓から転落する
すると誰かが駆け寄ってきて
大丈夫ですか、なんて呑気に聞いてくるので
私は起き上がって照れ笑いを浮かべた
大丈夫ですよ?
あなたもどうですか?