今この時間に家を出たと仮定した別の自分

 

家を出て歩く
しばらく進む
少し早歩きになってみる
進むペースが上がる
10分が経ち、大通りに出る
まだ進む
15分が経ち、川沿いの道に出る
まだ進む
さらに10分が経ち、橋を渡る
ふと思う
今この時間に家を出たと仮定した別の自分がいるとすれば
どれだけの速さで進めば
今の自分に追いつくのだろう
足は歩を進めながら、脳はイメージしてみる
家を出る
最初から走ってみる
しばらく進んで大通りに出る
まだ進む
現実の自分より早く川沿いの道に出る
ふと我に返ると
現実の自分は大きな工場の前を進んでいる
またイメージしてみる
走っている
橋を渡り始めるところだ
はっとする
大きな病院の前を進む現実の自分が振り返る
誰もいない
イメージする
橋を渡り終わって
大きな工場の前を進む
しばらく進むと大きな病院が見えてくる
走る自分の足音
イメージの中の足音
タッタッタッタッ
その音を背後に聞いて、思わず現実でも走り出す
追いつかれる
追いつかれる!
追いつかれるとどうなる?
焦りがそうさせたのか
赤に変わりそうな信号を、ギリギリで渡る
あーあ、もう少しだったのに
そんな声が、取り残されるように後ろから聞こえた