ここから見る景色も随分と変わって

 

ここから見る景色も随分と変わって
あの人と一緒にいた頃に
あの人を想いながら見ていたものたちが
どんどん見られなくなってしまった……
週末にあの人と会えるのを楽しみしていた私が
そのことを考えながら見ていたあの遠くの観覧車も
手前で工事が始まって、鉄骨が組み立てられて
そうしていつの間にかパチンコ屋が出来たせいで
もう今は見えなくなってしまった
確かあの人と会えなくなってしまったのも
同じ頃だったように思う
さらに何年も経って
少し見えてた古いアパートが取り壊されて
よく寄ってたコンビニも潰れて、何かの事務所になり
そして大きな桜の木が切られた今でも
私はあの頃の景色をベランダから探してしまうのだ
もう戻れないことを認めたくない意識が
未練がましい心が
私にそうさせてしまうのかもしれない……
観覧車が見えて
おんぼろアパートがあって
コンビニがあって
桜の木があって
あの人と会えていた
そんな景色は、もうこのベランダからは見られないのに