黒い建物

 

今、俺は黒い建物にいる
とてもでかい建物
誰もいない、物音もしない
全焼したような
焦げたような
黒く変色した巨大な廃墟だ
窓の痕跡らしき大穴から外を見ると
遠く下の方に
街明かりが点々と広がっている
この建物は高台に建っているらしい
そして俺はその建物の
さらに上階の方にいるようだ
わからない
自分がこの建物のどのあたりを
今さまよっているのか
そして、わからない
奴がこの建物のどのあたりを
今さまよっているのか……
出くわしてはいけない
見つかってはいけない
でも隠れていても意味はない
それがわかる
なんとなくわかるんだ
奴は常に俺の場所を把握していて
着実に迫り来るのだと……
だから俺は
ずっと逃げ続けなければならない
出くわさないように
移動し続けなければならない
夜が明けるか知らないが、明けるまで
ひたすら、この黒い建物の中を