ビン詰めの月の歌

 

信じられないくらいあっという間に一日が過ぎ
その一日が繋がって長い長いひと月が終わる
ひと月ひと月も瞬く間に過ぎ去り早一年
一年はつらつらと繋がり、私の長い長い一生となる
生まれた頃からだったか
空きビンに月のかけらを溜め込んでいた
かけらたちが少しずつビンの中で身を寄せ合い
私の一生を費やして、ひとつの月となる
月は形を成してはじめて歌をうたう
その歌は私のくだらなくもそれなりに壮大な人生を
あっけらかんとまとめあげ、しれっと終わる
けれどそれが、とてつもなく美しいという
やがて歌い終わった月はまたかけらとなる
そのかけらを、私の次の誰かが別のビンに移す
その人で同じことが繰り返される
月は狭いビン詰めの宇宙で
散逸と形成を永遠に繰り返し、歌い続ける
その度に歌はすべて異なり
同じものはひとつと歌われないのに
私は、そのうちのひとつにしか立ち会えないのだった