彼にだけは見えない光

 

少女は学校ではいつも明るくて、クラスの人気者だった
他のクラスの子とも、誰とも、仲が良かった
そんな少女は、彼をよくイジっていた
彼がいつもクラスに馴染めずにいたからだ
悪気があってのことではない
軽いノリで接していれば心を開いてくれると思ってのことだった
だけど彼は、まるで少女が見えていないようにしていた
少女の存在を無視し続けた
どれだけ話しかけても反応しない
月日が経ち、少女は後悔するようになっていった
はじめの接し方が悪かった
やり方が下手だった
誰からも好かれていると思って調子に乗っていた
彼が学校を嫌いなまま卒業しないための
ひとつの希望になりたかったのに
最後まで彼にだけは、その希望は見えていなかった……
だけど本当の最後の最後
卒業式も終わった頃だった
彼が突然少女に話しかけてきたのだ
少女は驚いたが、まず謝った
今まで変なこと言ってゴメン
すると彼も謝った
こっちこそ無視して悪かったよ

本当はどういうつもりで話しかけてきていたのか……
イジってきていたのか……
わかっていたのに、わかってて無視してた
ゴメン……

そうしてようやく、ふたりは友達になった
彼は少女を苗字で呼んで、ありがとう、と言った
少女が、下の名前でいいよ、と笑顔で返すと
彼は笑って言い直した
光さん、ありがとう