ゆらめひて消える

 

頭の中で、だんだんと遠くなっていく
愛しかったあの人が
大切だったはずのあの人が
時おり顔を思い出そうとするその度に
少しずつ、違う顔になっていく
こんな顔だったかな……
記憶を辿る
思い出も
会話も
すると声にも自信がなくなってくる
こんな声だったっけ……?
おかしいな、会話の内容は覚えているのに……
……そんなふうに
時おり思い出しては
もとの形から崩れてゆく記憶の中の人
大切だった人
やがてはすべて消えてしまうのだろうか
思い出すことすら忘れるくらいに
ゆらめいて