復元少女

 

キミはどうして笑わないの……?
……わからない
……笑い方なんて、忘れちゃったの
キミはどうして泣かないの……?
……わからない
……泣き方なんて、忘れちゃったの

彼女と最初に出会った時
すでに感情は失われていた
何もかもが抜け落ちたような
抜け殻のような少女だった

僕は彼女を復元した
人間としての彼女を復元しようとした
少しずつでも良い
いつかすべてが
完全に元に戻る日が来る
そう信じて

……ねえ、もういいわ
……私はもう、とっくに私ではなくなっていたの
そんなこと言わないでよ……
僕は、キミを助けたいんだ……

嘘だ

僕は、キミが笑えたらそれでいいんだ……

嘘だ

僕は、キミが泣いたり怒ったりできればそれでいいんだ……

嘘だ
嘘だ

……嘘よ
……違うでしょう?
……あなたにはきっと、隠してる別の感情がある
……あなたの、本当の理由はなあに?
……どうして私にこだわるの?

汗なのか涙なのかわからないものが
僕の顎先から床に落ちる
なにか言葉にできない感情が
激しい心音となって僕の体を駆け巡った
それでも、僕は
震える唇で紡いだ

僕は、キミが好きなんだ……
キミとずっと一緒にいたいんだ……

彼女は少しだけ微笑んだ
ように見えた

……そう
……やっと言えたね

本当だ
でも本当のことを言えば

……だけどそれは出来ないの
……私は、ずっと一緒にはいられない

本当のことを言えば
何か起きる予感はしていた
彼女は
彼女は、自分の右手を顔にやり
少しだけためらった後
ずるりとその頬を掴んで剥がした

なんで……!
なんでそんなこと……!

僕の訴えかける声もむなしく
頬の崩壊をきっかけに
彼女の体は少しずつ剥がれ落ちていった
床の上に粘土が散らばる
泣き叫ぶ僕の目の前で
彼女は僕が最初に出会った姿に戻っていった
山で掘り起こした時の姿に