崩れゆく夏

 

夏休みの帰省でキミと出会った
たくさん遊んだ
川でも山でも楽しかった
そのどれもが、都会では味わえない新鮮なものだった
魚を釣ったり、古い神社を見に行ったりした
肝試しもした
すべてが輝いていたはずだった
その思い出が、崩れてく
覚えてないんだ……
今でも夏が来るたびに怖くなる
僕はそんなところに行ってない
出会ったキミが、どんな子だったか、わからない
顔も名前も思い出せない
男の子だった? 女の子だった?
それに
帰省もなにも僕の地元は今住んでるここなんだ
思い出そうとするたびに崩れてく記憶
あの夏、僕はどこにいたのか
いったい誰と遊んでいたのか
そしてもっと怖いのが
それからも数年に一度、あの場所へ行った思い出が
今でも更新され続けてることなんだ
行ってないのに……
実は去年も行った記憶があるんだ
そしてキミと会っている
会ってないのに……
怖い、本当に怖い
僕の生活に、記憶に、知らない夏が混ざってくるんだ