君は蛾の鱗粉のように虹色にほどけて消えた

 

君はとても綺麗で
僕はすぐに恋をしてしまった
蝶のような華やかさと気高さが
この心を虜にしたのだ
君に会えてよかった
ずっとずっと大切にしよう
……数十年が経ち
僕は歳を取り
君は変わらずに綺麗なままだった
これだけずっと近くにいるのに
君と心が通っている気がしない
怖い
この歳になって
もう怖いものなんて無いと思っていた
なのに、君には僕が見えていないような気がして
ずっとそうだった気がして
それが今や僕には恐怖と不安でしかなかった……
やがてナイフを持ち出す
ガリガリ
ガリガリ
君を削る……
ほろほろとほどけて落ちる君
蛾の鱗粉のような鮮やかな虹色の粉が散る
やがて床には、君だったものが積もり
僕はそこに一筋の赤を垂らした