傘の巣

 

建物の2階にある店のウィンドウ越しに
雨の街の交差点を見下ろしてみる
色とりどりの傘がひしめき合い
往来する
その中に人の姿はほとんど見えない
傘たちが自分の意思で動いているようだ
そんな目で見てみると
こんな退屈な時間も面白くなる
ここは、傘の巣なのかもしれない
そんな妄想をしてみる……
普段いろんな場所で、差されている、または
立てられている傘たちが
一同に集まる棲み家
ここが、彼らの本来いる場所
彼らの集まる巣
……苦笑いをする
一応考えてはみたけど
もちろんそんなわけはない
それぞれの持ち主の家が
それぞれの傘の家なんだ
でもこういう空想もいいじゃないか
だって生きているように見えるんだから
さぁ、そろそろ店を出よう
コーヒーも飲み終えて、ずいぶんと経った
君もあの中へ帰るかい?
……なんてね