衛星停止

 

僕は真っ暗闇の中、ぐるぐる回る
目を閉じているのではない
ここは黒い空間なのだ
そしてここは出発点でもある
僕がこの先どう歩み出し、進み、生きるのか
それが最初に決まる場所
みんなここから始まった
でも僕はまだ歩き出せない
ぐるぐる
ぐるぐる
どの方向に止まって、そちらに歩き出そうか
いつまでも決められない
だって
小さな光が
どの方向に向いても、視線の先についてくるんだ
小さな星のような
遠い月のような
そんな光が、視界のずっと先の方にどうしてもついて回る
それはこう述べているようにも感じるんだ
どこに行っても、私はいるぞ、と
お前には、同じ運命が待っているのだぞ、と
静止衛星
ふっと、そんな言葉を思い出す
母星の自転と、衛星の公転とが同期し
止まっているように見える人工衛星
ずっとついて回るあの光は
もしかして僕に必要なものなのではないだろうか
そこでふっと、また思う
母星の自転が止まると、どうなるんだろう
光は、公転をやめずに回り続けるのだろうか
そうすれば、僕はあの光の無い場所を選べるのか
僕は、やってみた
止まって、みた
……
止まった、光も、止まった
衛星も公転を停止した
公転が止まったらどうなる?
考える時間は一瞬だけだった
小さな光が
小さかったはずの光が
ものすごい速さで、大きさで、僕に向かって飛び込んできた
すぐさま轟音とともに、世界がはじけた
爆発した、そう思った
そしてもうひとつ思った
あぁ、こうやって僕は始まるんだ、と
いくつもの、いくつもの星が、そうして僕の中に生まれた