絵の城

 

絵の城には王様がいました
王様はいつも美味しものを食べ
好きなことをして
贅沢をして過ごしていました
でも王様は自分が絵の中の人だと知りません
自分が現実の存在ではないことを
知らないまま生活しています
大臣も兵隊たちもメイドたちも
自分たちが絵の城に住む、絵の人だとは
気づいていないのです
ある時、城が火事に遭いました
絵だった城はあっという間に燃えカスになり
すべて消え去ってしまいました
絵の城を描いた絵描きが
自分で火をつけて燃やしてしまったのです
彼はいつしか
真実に気づいた絵の城の住人たちが
絵の中から出てきて自分に復讐するという
そんな妄想にとらわれていたのです
彼は二度と絵を描きませんでした
こうして絵の城は滅びてしまいましたが
ある意味で王様たちは真実を知ることもなく
幸福的な最期を迎えたと
そう、言えるのかもしれません
少なくとも、王様たちは幸せでした
自分たちが最初から実在していなくても……
おわり