昔から、窓というものが好きだった
中から外を見るんじゃなくて
町を歩いて、いろんな家の窓を見るのが好きなんだ
その奥の生活を想像してみる……
三角屋根についた天窓っていいなぁ
あの向こうには屋根裏部屋があって
夜になれば少年があの窓から星を眺めるのかなぁ、とか
表通りに面した出窓もいいなぁ
窓辺に大きな花が飾ってあって
広いリビングで一家団欒があるんだろうなぁ、とか
ね
でも一番好きなのは
忘れ去られた窓、なんだ
家の裏手側にあるような小さな窓で
きっと、その家の住人でも、そこに窓があるなんて
普段は気にもしてなくて
窓辺には雑多に物が置かれていて
ほとんど窓は塞がってしまっている
その切ない感じが、もの悲しい佇まいが
なんとも、たまらない
だってこの窓は
外からじゃなければ、そこに窓があったなんて
思い出されもしないんだ
本来は家の中にいる人のために作られたものなのに……
その憂いに、心惹かれる
小汚くて
曇ってて
暗い
きっと、その家の奥まった部屋にあるのだろう
そんな忘れ去られた窓を見つけた日は、僕は嬉しいんだ
自分と同じような誰かと出会ったようで